TGFM23からアヌシー国際アニメーション映画祭最高賞へ:『The Violinist』アーヴィン・ハン監督インタビュー

『The Violinist』は、TGFM 2023に選出されたプロジェクトであり、その後、2026年6月に開催されたアヌシー国際アニメーション映画祭の最高賞であるクリスタル賞を受賞しました。この快挙を受け、TGFMは本作の監督兼プロデューサーであるアーヴィン・ハン氏にメールインタビューを実施しました。

Ervin Han (監督、プロデューサー)


TGFM:クリスタル賞(グランプリ)の受賞の知らせを聞いた瞬間、最初に思ったことは何でしたか?また、この賞は、ご自身にとってどのような意味を持ちますか?

ハン監督:正直なところ、信じられませんでした。この映画の構想を思いついたのは10年以上前ですが、その当時は映画を完成させることさえ遠い夢のように思えました。クリスタル賞を受賞するなど、想像すらしていませんでした。
この賞は私たちのチームにとって大変大きな栄誉です。そして、シンガポールのアニメーションや映画界にとっても意義深い出来事になればと願っています。

TGFM:観客の反応で印象的だったものはありますか? また、映画祭という場にはどのような価値があると感じていますか?

ハン監督:11分間に及ぶスタンディングオベーションは忘れられません。しかし、それ以上に心に残っているのは上映後の観客との会話です。
さまざまな国の人々が、この作品に共感し、深く心を動かされたと話してくれました。それこそが映画祭の持つ魔法だと思います。映画祭は、自分たちとは異なる文化の物語に純粋な好奇心を持つ観客を結びつける場なのです

©Annecy Festival


TGFM:戦争という重いテーマと、美しい音楽をどのように結びつけたのでしょうか?

ハン監督:この映画は、実は戦争そのものを描いた作品ではありません。戦争を生き抜いた「人々」の物語です。
音楽は、暴力が渦巻く中でも希望や愛、そして記憶を生き続けさせるための感情の言語となりました。時には、音楽は言葉では表現できないものを伝えてくれるのです

TGFM:主人公たちの物語を通じて、観客に最も伝えたかったメッセージは何ですか?

ハン監督:歴史とは、究極的には「人」の物語だということです。
出来事や年号の背後には、並外れた状況に翻弄された、ごく普通の人々の人生があります。また、この作品を通して、平和は決して当たり前のものではなく、とても壊れやすいものであること、そして思いやりや芸術、音楽は、どんなに暗い時代にあっても生き続けることができるということを感じてもらえれば嬉しいです

© Robot Playground Media, TV ON Producciones, Altri Occhi


TGFM:国際共同製作として進める上での最大の挑戦は何でしたか? 

ハン監督:信頼関係を築くことです。
シンガポール、スペイン、イタリアのパートナーと協力しましたが、それぞれ異なる視点や仕事の進め方を持っていました。しかし、全員が、この作品はシンガポールならではの視点や文化に根ざした、本物のシンガポールの物語であり続けるべきだという思いを共有していました。その明確な目的意識があったからこそ、この共同製作は非常に実り多いものになりました

TGFM:TGFM 2023に参加した際にイタリアの会社が共同製作に加わったそうですが、その経緯を教えてください

ハン監督:TGFMは、すぐに契約を成立させる場というよりも、意味のある対話の機会を与えてくれました。そうしたミーティングを通じて信頼関係を築き、最終的にクリスティアーノ・ボルトーネ氏とそのチームが共同プロデューサーとして参加してくれることになりました。共同製作は、プロジェクトだけでなく、人と人とのつながりによって成り立つものなのだと改めて実感しました。
また、TGFM 2023では、作曲家リッキー・ホーのマネージャーとも出会いました。リッキーはシンガポール出身ですが、現在は台北に住んでいます。マネージャーを通じて彼とつながることができ、その結果、彼は素晴らしい音楽を手がけ、本作における重要なクリエイターの一人となりました

TGFM:近年のアジアのアニメーション業界の成長をどのように見ていますか?

ハン監督:とても刺激的な時代だと思います。
日本は引き続き非常に高い水準を示していますし、中国、韓国、インドでもますます意欲的な作品が生まれています。次の時代には、東南アジアも独自の声を見つけ、自分たちの文化に深く根差しながらも世界中の人々の心に響く物語を発信していけることを願っています

©Annecy Festival

TGFM:次回作について、少しだけ教えていただけますか?

ハン監督: 現在、『A Banquet for Hungry Ghosts』という長編アニメーション・アンソロジーを制作中です。『The Violinist』と同様にアジア文化を題材にしていますが、作品の方向性はまったく異なります。地域各地の民間伝承や怪異譚、そして食文化を織り交ぜた作品です。
現在、このプロジェクトをTGFM 2026に応募する予定です。2023年に続き、再び参加できることを楽しみにしています

TGFM:今後TGFMへの参加を考えているチームにアドバイスをお願いします

ハン監督:売り込みだけを目的にするのではなく、人との関係を築くために参加してください。
資金調達や共同製作は、一度のミーティングで実現するものではありません。話すことと同じくらい相手の話に耳を傾け、自分たちのプロジェクトの独自性を明確に伝えてください。そして何より、信頼は時間をかけて築かれるものだということを忘れないでください

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