プチョン国際ファンタスティック映画祭のSignature部門に公式選出!TGFM2023に選出された『Home A Loan』のプロデューサーBeki LIMへインタビュー

Signature部門は、ジャンルや国境を越えて響く世界の注目作を上映するセクション。第30回目を迎えた映画祭の特別に新設された部門であり、この記念すべき回に正式上映された『Home A Loan』のプロデューサーであるBeki LIMへメール・インタビューを実施した。

Home A Loan プロデューサー Beki LIM

TGFM:今作の制作に携わった経緯を教えてください。

Beki LIM『Home A Loan』は、企画開発の初期段階から自社で立ち上げたオリジナルプロジェクトです。多くの人が身近に感じられる現実的なテーマを、ジャンル映画というエンターテインメントの枠組みを通して描けないかという発想から企画がスタートしました。その中で着目したのが、韓国社会が抱える住宅問題です。この現実的なテーマにホラーならではの緊張感やサスペンスを掛け合わせることで、観客が物語により深く引き込まれ、登場人物の感情にも強く共感できる作品になると考えました。

本来、家は誰にとっても最も安心できる場所であり、心安らげる空間であるはずです。しかし現実には、住まいが不安や重圧の象徴となってしまうことも少なくありません。私たちは、そうした現代社会のリアルな感情を丁寧に描きながら、ホラー映画ならではのスリルやエンターテインメント性も兼ね備えた作品を目指しました。恐怖やサスペンスを存分に楽しんでいただくと同時に、私たちが直面している社会の現実についても、あらためて考えるきっかけとなる作品になればと願っています。

TGFM:日本や欧米のホラーと比較して、韓国ホラーの違いはどこにあると感じますか?

Beki韓国ホラーの魅力は、ホラーでありながら、人間ドラマとしての深みを併せ持っている点にあると思います。単に観客を驚かせたり恐怖を与えたりすることが目的ではなく、家族の絆や喪失、罪悪感、トラウマ、さらには社会が抱えるさまざまな問題を、ホラーというジャンルを通して描く作品が数多くあります。たとえ超自然的な存在が登場するとしても、物語の核にあるのは、登場人物たちの感情や人間関係の変化です。

また、韓国ホラーはミステリーやサスペンス、クライム、時にはコメディなど、異なるジャンルを自然に融合させることにも長けています。そのため、単なる恐怖だけではない、多層的で豊かな物語が生まれているのだと思います。さらに、韓国ならではの文化や民間信仰、シャーマニズムといった土着的な要素が物語に深く根付いていることも、大きな特徴です。『哭声/コクソン』や『破墓/パミョ』は、韓国独自の信仰や儀式を題材としながらも、国や文化を超えて多くの観客を惹きつけた代表的な作品だと思います。『Home A Loan』もまた、人間の感情と社会の現実に深く根ざしたホラー作品です。本作では、韓国社会が直面する住宅価格の高騰や、不動産・再開発投資をめぐる問題を物語の背景に据えています。

主人公は、家族を守るために懸命に行動する一人の母親です。しかし、追い詰められていく中で、彼女は次第に、自らが守ろうとしていた家族にとって最も危険な存在へと変わっていきます。母親の心の崩壊と家族の葛藤を通して、経済的な重圧や将来への不安、そして絶望が人の愛情をいかに歪め、ごくありふれた「家」を恐怖の舞台へと変えてしまうのかを描いています。

TGFM:ホラー映画は他ジャンルと比べて制作上どのような特徴がありますか?

Bekiホラー映画は、「何を見せるか」だけでなく、「何を見せないか」が恐怖を生み出す重要な要素になるジャンルだと思います。恐怖は、派手な特殊効果やショッキングな映像だけで生まれるものではありません。カメラワークや間の取り方、静寂、編集のリズムなど、演出の積み重ねによって緊張感が醸成され、観客の想像力を刺激することで、より大きな恐怖へとつながります。見えないからこそ怖い、という瞬間をどう作るかが非常に重要です。

また、ホラーは創造性と制作上の現実とのバランスが問われるジャンルでもあります。比較的限られた予算で製作される作品が多いため、大規模なVFXや豪華なセットに頼るのではなく、脚本や演出、美術、音響などの工夫によって独自の恐怖を生み出していく必要があります。実際に、A24やBlumhouseの作品、『パラノーマル・アクティビティ』のような低予算映画が世界的な成功を収めているように、ホラーはアイデア次第で大きな可能性を持つジャンルだと言えます。

一方で、それだけに難しさもあります。ホラーは長い歴史を持ち、非常に多くの作品が作られてきたジャンルです。そのため、観客はさまざまな演出や展開に慣れており、既存のパターンを繰り返すだけでは新鮮さを感じてもらえません。だからこそ、他のジャンル以上に独創性が求められると思います。新しいコンセプトや映像表現はもちろん、その作品ならではの感情や文化的背景をしっかり持つことが、限られた条件の中でも作品を際立たせる大きな要素になります。

同時に、ホラーは作品全体の完成度が非常に重要なジャンルでもあります。照明や撮影、編集、美術、音響など、どれか一つでも完成度が十分でないと、観客の没入感は簡単に途切れてしまいます。恐怖は、世界観への没入によって初めて成立します。そのため、すべての制作部門が緊密に連携し、一つひとつの演出を丁寧に積み重ねることで、作品全体として説得力のある恐怖を生み出すことが何より大切だと考えています。

TGFM:TGFM2023に参加して頂いた際に、ミーティング数がNo,1だったのを記憶しております。TGFMに初参加された時の印象をお聞かせください。また、今後、TGFMに期待することはありますか?

Beki正直なところ、私自身もこれほど多くのミーティングを行うことになるとは思っていませんでした。記憶が正しければ、『Home A Loan』はTGFM 2023で唯一の韓国作品だったと思います。そのことに加え、ジャンル映画という点も、多くの参加者の関心を集めた理由の一つだったのではないでしょうか。また、近年、韓国映画がアジアをはじめ世界で高い評価を得てきたことも、作品への関心につながったと感じています。

さらに、本作が扱うテーマも、多くの国の方々にとって身近な問題だったことが大きかったと思います。住宅価格の高騰や不動産をめぐる課題は韓国だけの問題ではなく、日本をはじめ世界各国で共通する社会課題です。そうした背景があったからこそ、多くの方に作品のコンセプトを理解し、共感していただけたのではないかと思います。

当日は朝から夕方までミーティングが続く非常に慌ただしいスケジュールでしたが、それ以上に実りの多い時間でした。普段であればなかなかお会いする機会のない、日本やアジアだけでなく、ヨーロッパや北米のプロダクションや配給会社の方々と直接意見交換ができたことは、とても貴重な経験だったと思います。

そして何より印象に残っているのは、その出会いがマーケット期間中だけで終わらなかったことです。現在でも多くの企業と継続的に連絡を取り合い、お互いの企画について情報交換をしたり、共同制作の可能性について具体的な話し合いを続けたりしています。

また、TGFMはギャップファイナンスに特化したマーケットである点も非常に特徴的でした。企画開発の初期段階にあるプロジェクトを紹介することが中心のマーケットとは異なり、TGFMでは、より実際のビジネスにつながる議論ができるという印象を受けました。もちろん、どのマーケットでもネットワーキングは重要ですが、TGFMでは単なる情報交換にとどまらず、資金調達や共同制作、さらには具体的なパートナーシップの実現を目的として参加している方が多いと感じました。そのため、一つひとつのミーティングが非常に実践的で、密度の高いものだったと思います。

今後も、自社プロジェクトを紹介する立場としてだけでなく、新たな共同制作の機会を積極的に探すプロデューサーとして、ぜひ継続的に参加していきたいと考えています。

TGFM:今後開発中のプロジェクトについて教えていただけますか? 

Beki現在、いくつかの新しいプロジェクトが進行しています。韓国では、ろう者コミュニティを題材にした『WOW(仮題)』の製作を進めており、今年後半の撮影開始を予定しています。本作は、CODA(ろう者の親を持つ聴者)の監督がメガホンを取る作品です。また、韓国の著名な監督とともに、商業作品としてのファミリーコメディの企画開発も進めています。

国際共同制作については、台湾でスラッシャースリラー、ファミリーコメディ、ミステリースリラーの3作品を準備しており、いずれも今年後半から来年にかけて撮影に入る予定です。

さらに、日本とベトナムとの共同制作プロジェクトも進行していますが、現時点ではまだ詳細をお伝えできる段階ではありません。

そのほかにも、インドネシアやシンガポールをはじめとするアジア各国のパートナーと新たな共同制作の可能性を積極的に模索しています。今後は、こうしたネットワークをさらに広げ、ヨーロッパとの共同制作にも取り組んでいきたいと考えています。

TGFM:将来TGFMに参加したいチームへのアドバイスがあれば教えてください。

Beki先ほどもお話ししたように、TGFMの大きな魅力は、参加者の多くが資金調達や共同制作につながる具体的なパートナーシップを真剣に模索している点にあると思います。これから参加を考えているチームへのアドバイスとしては、プロジェクトを紹介することだけを目的にするのではなく、初回のミーティングから実際の協業を見据えた議論を進めることをお勧めします。共同制作の体制や資金計画、各パートナーの役割などについても、できるだけ具体的に話し合える準備をしておくと、より有意義な時間になると思います。

また、監督とプロデューサーが一緒に参加することも非常に重要です。監督は作品の世界観やテーマ、クリエイティブなビジョンを直接伝えることができ、プロデューサーは制作体制や資金調達、ビジネス面について具体的な話を進めつメンバーがそろって参加することで、限られたミーティングの時間をより効果的に活用でき、その後の具体的な協業へることができます。クリエイティブとビジネス、それぞれの視点を持つメンバーがそろって参加することで、限られたミーティングの時間をより効果的に活用でき、その後の具体的な協業へと発展する可能性も高まるのではないでしょうか。

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